連れてこられたのは、「相談室」と書かれた部屋。

椅子に座るように言われて、腰をかける。

「ご用件はなんでしょうか」

「えっと…、ここに編入したいんです」

わたしがそう言うと、教頭先生はかなり驚いたようで目を見開いている。

「えー、保護者の方は?」

「あー、仕事の都合で来れなくて…。判子は預かってきました」

そう言って、なんとかつくった判子を取り出す。


この判子は、大人の格好をして店に行き、偽名の「岸山」でつくったもの。

偽名は、岸山実織。

わたしの親は、あらゆる手段でわたしを見つけようとするはず。

本名で生活していたら、あっという間に見つかる。

だから、偽名を使ったの。


この偽名に深い意味はない。

なんとなく、気に入った名前を使ったの。


それに、家出してきました、なんて言えない…。


「しょうがないですね…。では、こちらの書類に必要事項を記入して下さい。編入試験はいつなら大丈夫ですか?」

「明日で大丈夫です」

「では早速、明日に試験を行いますね。」

「はい!よろしくおねがいします!」

こうして、編入する(予定の)高校が決定した。