一歩一歩ゆっくりと歩みを進める

学園の敷地内と外ではまるで世界が違うような気がした


「やあ。オレって聞こえたから男かと思ったら、こんな可愛いお嬢さんだったとは」


オレの目の前にオレがこの世で最も嫌いな“モノ”が現れた


「おっ男…」


男は大嫌い

見るだけで吐き気がする


「オレの名前はジョーカー。以後お見知りおきを」


そいつはオレの手を掴み、手の甲にキスをした


「ななななな…何してんだ!!!!!!」

「そんなに照れなくても」

「照れてねぇよ!!」


キスをされた手の甲を何度も拭う

それでも感触までは消えない


「それでキミの名前は?」

「何でお前に教えなきゃいけねぇんだ」

「女の子なのに男みたいな口調で…もっと可愛く話しなよ」

「余計なお世話だ」


何でこいつはオレに構うんだ

早くオレの視界から消えて欲しい


「早く消え失せろよ」

「キミの名前を教えてくれたら、消えてあげても良いけど?」

「…瀬川李緒(せがわりお)」


渋々口を開くと、奴は口角をあげながら笑い


「これから宜しく、李緒ちゃん」


こともあろうにオレの頬に軽くキスをした