-いつもと変わらぬある朝

「蘭ーはやくしなさい。おくれるでしょ」 

3年前パパを病気で亡くした
私は、今はママと私の2人で暮らしていた。
私は、いつもよりも起きるのが遅れてしまい、
 学校に遅れそうになっていた。
「うっ・・・ってやばー!」
あわててとび起きたころには
窓の外にもう歩いている人がいないことに気づく。
急いで準備して朝ごはんも食べずに家を出た私は、
親友の明日香にやっとの思いで追いついたのは
がっこうの100メートルくらい手前だった。
「もー蘭ってばいっつもあんな早いのに
 遅れてくるんだもん。
 先行っちゃったよー」
「あーごめんごめん」
「マジさみしかったー」
いきなり飛びつかれた私は、
危うく転びそうになった。
そのせいでママにもらった
ストラップが落ちた。
『お守りだから』
っていってもらった
ガラスのイルカが、
われてしまった・・・
「ごめんっ蘭ー。」
「いいよいいよ。」
このときはまだ、
予期せぬことが起こるとは、
誰も知らなかった。

その日の昼前
家から連絡があったらしく、
先生が飛んできた。
「櫻田さん。落ち着いて聞いてくださいね。」
「ど・・・どうかしたんですか?」
あまりに切羽詰まった先生の様子を見て、
さすがの蘭も、よからぬことが起きたことは分かった。
「櫻田さんお母さんがさっき、
 病院に運ばれました」
「ちょっ・・・ちょっと待って下さいよ先生、
 それだけじゃわかんないよ。なにがあったの?」
さすがにみんなの前だったので、
周りがざわめきだす。
「ちょっと静かなところに来てくれる?」
そういって玄関に連れて行かれた。
「櫻田さん。お母さんが家から出てすぐの道路で
 ひき逃げにあったの。」
「え・・・」
あまりに突然すぎて何が何だかわからなかった。
「突然すぎて動揺していると思うけど、
 今はとりあえず、帰る準備をしてきてちょうだい。」
「分かりました。」
「先生、病院まで送ってあげるから」
動揺を隠しきれない私はそのまま先生の車で、
近くの病院に向かっていた。
(私、どうすればいいんだろ・・・)