「あっ!ちょっ…」

後ろで誰かが叫んだ。でも今はそんなことを気にしてはいけない。逃げなければ。

細い路地を逃げ回る。しかしここは京の町。あの碁盤の板のような町である。

(今どこだよ。わかんねー。)

声は聞こえなくなった。渚の体力も限界だった。

もうダメかもしれない。フッと横を向くと神社があった。

疲れている。少しくらいなら休んでいこう。と渚は思った。

神社にもたれて空を見た。

真っ赤だった。空なんか見たのはいつぶりだろう。こんなにキレイだったんだ。

制服のポケットにてを入れて気づいた。

中にはケータイが入っていた。

笑ってしまうくらいこの時代に似合わないものだった。

「不思議なものですね。なんですか。それ」