刀を鞘に納めてその場に置いた。
持っておく気にはならなかった。
いくら人を殴り慣れてるからといって、人を殺したことはなかった。
初めて人を殺した。
その刀をどうしても持っておくことが出来なかった。
刀を置いてフラりと細い細い路地へ入った。
空はもう薄暗かった。何処へ向かえばいいのか。
それすらも分からない。なんせ時代が違う。場所なんて分からなかった。
大好きな幕末のはずだった。大好きな幕末なのに…。
その幕末で人を殺してしまった。
私は何処へ向かって歩いているのだろうか。目の前が真っ暗になった。
まずはこの返り血を洗い流したい。自分の体を見て吐き気に襲われた。
そのとき…
後ろに気配を感じた。
でも渚は今刀は持ってない。
素手対刀は圧倒的に刀が強い。当たり前だ。
こーゆーときは…
最後の手段…
逃げる!



