阿鼻叫喚

男は崖っ淵を歩いていた。

少女が近付いてきて、男に尋ねた。

「何をしているの?」

男は応えた。

「崖っ淵を歩いているのさ」

少女は不審そうに更に尋ねた。

「そんな平坦な所で?崖も無いのに?」

男はニヤリと笑った。

「俺は気付いたんだ。皆が気付いていないだけなんだよ」

男は足を踏み外しかけたが、すぐに体勢を立て直した。

「人間の存在ってものに…誰もが例外なく崖っ淵を歩くように、曖昧で危険と紙一重な存在だって事にさ」

男は足を止める事なく続けた。

「そして俺はこれからも崖っ淵を歩き続けるのさ」

少女は楽しそうに男の背中を見送った。