「今からマラソン?朝っぱらから?」

「は?」

え・・・
今すごく睨まれた気がしたんですけど。

「誰がマラソンっつった」
「え?だって走るんでしょ?」
「バカ。その走るじゃねぇよ」
「じゃあどの走る?自転車でもかっ飛ばすの?」
「・・・はぁ」

なんだそのため息は!!
マジ意味わかんない。

「暴走、だよ。愛羅ちゃん」
「暴走・・・?」
「うん。俺ら、月の第三土曜にいつもチーム集めて走りをしてんの。」
「・・・。」

走りって・・・
暴走のことだったんだ。
知らなかった。
でも・・・

「あたし、素人だしそういうの慣れてない」
「大丈夫だ。愛羅は俺が守る」

・・・マモル?
龍樹、今、なんて言った?

「りゅう・・・」
「ホラ、行くぞ」

あたしは龍樹に連れられ、何かよくわからない
改造された黒い車に乗せられ
そのまま街中を走らされた。

「あのさ、龍樹」
「あ?」
「後ろに付いてくる車やバイク・・・」
「あぁ」
「一体何台なの?」
「あぁ、約140台ぐらいじゃねぇか?」
「ひ・・140台?!」
「あぁ」

あぁって・・・普通なのかな。
すっごい冷静で相変わらずな無愛想で
返事をする龍樹。

あたしたちはそのまま
街中を約半日使って走り回った。

これが、暴走。
これが、暴走族の世界。

あたしはどうやら、
とんでもない世界に入ってきたらしい。

そして、今、
この「Blackright」という
最強チームのTOP、早瀬龍樹の隣にいる
高校1年のあたし、松川愛羅。

あたしの望んでいた世界とは
まるで違う、
野獣たちの住む黒い世界。

あたしは、これから
この野獣たちの女王になることを
まだ知らなかった・・・。