夢を見た…
夢だとはっきりわかる夢だった。
だって
篤と笑いあった日なんて遠い遠い昔の話だ…
「麗…
大丈夫か?」
暖かくて柔らかい咲の声が私を目覚めさせた。
「咲?
麻乃はどこに??」
日はまだ東よりから差していて、さほど時間はたっていないようだった。
きっとまだ始業式の真っ最中。
麻乃は1人かもしれない。
「まさか麻乃を1人にしたの?」
自分でこの状況を作ったのに軽くパニックを起こしていた。
咲が麻乃を1人にするなんてあり得ない。
咲は怖いくらい優しいんだ。
そして鋭い感性を持っている。麻乃の寂しさを十分分かっているはずだ。
なのにどうして…
「麻乃ちゃんに頼まれた。
麗の様子が変だから見ていてほしいってさ
案の定倒れてるし…」
咲の呆れたような眼差しに、つい目をあからさまに反らした。
「鈴城篤のことは少しずつ過去にすれば良い。
麗は深く愛せる良い女だよ大丈夫…」
思わず涙が頬を伝った。
何の涙なのか…分からなかった。

