「咲にも伝えておいて
行かないって」
暖かな瞳を向け麻乃に言った。
麻乃は渋々諦めをつけたみたいで、絡めていた手を私の腕から抜いた。
「わかったよ
私じゃあ行くね……」
麻乃はさっきとは打って変わった寂しげな笑みを浮かべていた。
そして後ろ髪を引かれるように、なんども振り返りながら屋上を後にした。
麻乃の心は辛い過去から脆くて儚い。
さっき私は麻乃が傷ついた心を笑みの裏側に隠したのを分かっていた。
それなのに一緒に階段を降りなかった私は残酷なのかもしれない。
でも物思いを巡らせていたうちに屋上を離れられなくなった。
屋上は私の唯一の逃げ場所

