屋上には普段から鍵はかかっていない。
爽やかに吹き抜けていく朝の風は私の心まで洗ってくれるようだ。
いつの間にか、ここから学校の様子を眺めるのが私の日課になっていた。
そうあの日から…
ふいに過去の暖かい思い出を思いだし、そっと目を伏せた。
咲…
あんたは優しすぎて私には痛い。
ぼんやり思いを巡らせていたとき、勢いよく扉の開く音がした。
「麗ちゃん
おはようっ!!」
緩いウェーブがかった栗色の髪を揺らし、麻乃が声をかけてきた。
麻乃は私の数少ない友人の1人。
人形みたいな可愛らしい顔に華奢な体つき。
そして声質がもとから可愛いから、無理に声を高くする女子とは違う透き通ったソプラノ。
こんな可愛い彼女を男たちが放っておくはずもなく、密かに¨姫¨と呼ばれファンクラブがある。
そんな絶世の美少女と私は今対峙している。

