「仕方ないじゃないか。

仕事が忙しくてそれどころじゃなかったんだ」

それどころじゃなかった?

愛人に精を出していたと言う方が正しいんじゃね?

ホント、うちの父親はウソがヘタだと思う。

そんなんだから年下の部下に手柄を横取りされたんだよ。

上司にも見捨てられて、今じゃ窓際の隅の隅に追いやられてるヒラのペーペーな親父。

だから娘――姉貴も寄りつかねーんだよ。

自分の父親が万年ヒラ社員だなんて、死んでも言える事実じゃねーよな?

とっくの昔に家出した姉貴に少し同情した。

なのに母親は母親で、今でも必死だ。

親父が出世する訳ねーじゃん。

とっくの昔に出世コース外れて、年下の部下にいじめられてるんだから。