「――もういいわ…」

カバンを取りにきたことなんて、もうどうでもよくなってしまった。

今度の休み、洋介に新しいカバンを買ってもらおう。

私はそう思うと、家を出た。

今日限り、本当にこの家に帰ることもない。

今日限り、本当にこの家に戻ることもない。

だって私の家は、洋介の家なんだもん。

娘と息子はいない。

夫もいない。

いるのは、洋介ただ1人。

彼は私の愛しい人。

幸せにしてくれる人。

愛してくれる人。

私は、洋介しかいらない。