ちょっと矛盾している大家さんの2つの約束、

でも、その頃の私にはちゃんと伝わった。

大家さんがなにが言いたかったのか・・。

私は、長々と大家さんに頭をさげて

ドアノブに手をかけた瞬間、

大家さんが、一言つぶやいた・・。

「まだ、１つ約束言っとらんよ？」

３つ目の約束・・・。

そっと振り向き大家さんの顔を見た。

「３つ目、このアパートの大家さんは

　鈴原　夏季の母親だがんな？」

小さいころから娘のように可愛がってくれた

大家さん。

いつしか、私にとってもお母さんのような

存在で、心を開いていった・・・。

最後の約束を聞いた私は、

大家さんの前に小指を突き出した。

大家さんも自分の小指を突き出し

結ばれた。

「指きりげんまん嘘ついたら針千本のーばす

　指きった！！」

幼児のように笑う私、それと同時に

大きな声で負けじと笑う大家さん。

そうして、出発した私。

寂しかった過去の自分を

振り返るたびに思い出す悲しい記憶。

両親がいないという現実とぶつかった

まだ小さかった私の心には

衝撃が大きすぎて部屋にこもった事も

あった。

まさに、そのころの私の毎日は、

『地獄』のような日々だった。

何日も家から出てこない私を心配してくれた

大家さん。

その時から、大家さんとの２人３脚が

始まった。

少しづつすべてを受け入れはじめた自分。

それは、まるで暗闇に光る輝きのようなものでした。

だからこそ、叶えるんだ・・・・夢を。

大家さん・・・・いや、お母さんのために。