【短編】阿呆と馬鹿の関係




「まぁーちゃん、保健室行くって言っておいてくれる?」

「へ? 一花?」


見たくない。
それだけで、教室から飛び出してしまった。

見たくない。
そう思ったのに、やっぱりあたしは阿呆で。

見たくない。
それなのに、柚木達の隣を通らなきゃならない。

見たくない。
でも、目は柚木を追って。

見たくない。
一瞬合った目は、すぐに逸らされてしまったんだ。


きっついなぁー……。


今まで恋愛で泣いた事なんてない。

こんな苦しい思いだってした事がない。

だけど、今は胸が締め付けられそうだよ。



保健室には行かず、空き教室へと入った。

ドアに持たれかかり、泣きそうになった目を瞑る。


チャイムが響き渡り、ザワザワしていた声が少しずつ静かになってきた時だった。


――ガタガタッ


持たれていたドアを開けようと無理矢理な力を背中に感じた。


ヤバッ。
先生!?


持たれかかっていた背中を浮かせ、開くドアを見上げた。


え……。