【短編】阿呆と馬鹿の関係




次の日、いつもみたいな“阿呆と馬鹿”って言い合いは教室で聞こえない。


いつもなら、休み時間になった瞬間振り返って何か言ってくれるのに。

今日は、チャイムが鳴るまで席には戻らないし。

休み時間になると、すぐにどこかへ行ってしまう。

くだらない用事だって頼んでくれない。

目だって……合わせてくれない。


それだけで、ツライのに。


「おーい、央太!」


柚木の名前を誰かが呼ぶだけで反応してしまう、あたし。


「んー?」

「央太、呼ばれてるぞー」


そう言われて、ダルそうに呼ばれた方へと歩く柚木。


呼び出した相手が教室のドアから顔を覗かせたのは、石沢さんだった。


あはっ……、もう付き合っちゃってるんだ。


そっか。

そりゃそうだよね。


胸が痛いや。


石沢さんに笑いかける柚木も。
柚木に笑いかける石沢さんも。


そんな仲の良い姿、見るのがキツイ。