「って、何膨れてんねんっ」
ぷぅって膨れたあたしを見て笑うから、柚木を睨んだ。
「えぇ? 何で俺睨まれてるわけ!?
俺、別に何もしてないよなぁ?」
してないよ、してないけど、したんだよっ!
あたしを見ながら、首を傾げる柚木が可愛らしくて憎い。
でも、今なら言える気がする……。
「あのねっ!」
柚木の顔だけを。
それだけを見てれば良かったんだ。
それなのに、あたしは目線を落としてしまった。
そして目に入った学ランのポケット。
両手を突っ込んで、片方から出かかったピンク色の封筒。
石沢さんからの手紙が見えた。
時が止まったように固まってしまった、あたしに声がかかる。
「瀬名、今何か言おうとしてなかったっけ?」
「あー……何ソレ。もしかしてラブレター? わー、柚木ってモテるんだねっ。
しかし、ラブレターとか古典的な事する子、まだ居るんだねー」
最悪だ。
学ランのポケットを指差し、思ってもない事が口から溢れ出る。
笑ってるけど、顔が引き攣っていくのが自分でもわかる。
でも柚木は、何も言い返してこない。

