ついさっきまで、楽しそうに
笑ってたのに。



――心の中では、本当は
ずっとそんなことを
考えてたのか。



疑念を隠して、何事も
なかったように、振る
舞ってたのか……。



「あんず――…」



伸ばした手を……あんずは
避けるように、一歩後ろに
下がった。



「……たぁくんのこと
大好きだけど。

何だかあたしもう、よく
わかんなくなっちゃったよ……」



そう呟く瞳から、ポロリと
一粒、透明な雫がこぼれ落ちる。



「あんずっ!」



背中を向けて走り出した
あんずを、オレはその場に
縫い付けられたように、
一歩も動けないで
見つめてた……。





     ★★★★★


_