「それに、芸能界に戻るってさ。しばらくすればアイツは如月にも帰ってくる」
「・・・っ・・・」

悔しそうに、華園は下唇を噛んだ。

「満奈はここで・・・605号室で暮らす」
「そんなっ!」
「当たり前だろ?ここは元々俺と満奈の部屋なんだから」

そうだ・・・。

605号室は、俺と満奈の始まりの場所。

ここから俺の恋が始まった。

ここで愛を育んだ。

満奈との思い出がたくさん詰まったこの部屋。

アイツが如月に戻ってきたら。

またこの部屋で、愛し合いたい。

「・・・嫌です」

この期に及んでまだ言うか。

諦めない華園に、ため息が零れた。

「何で桜井先輩じゃないとダメなんですか?」

か細い声で言った。

「私の方が断然可愛いし、品もある。何より桜井先輩よりも隼斗先輩の近くにずっといられる」

・・・自分で言うか?

“可愛い”なんて。

“品がある”なんて。

満奈は決して自分を上から見ない。

いつも“あたしなんて可愛くないもん”と言い張っているからな。

そこが、満奈と華園の違うところ。

「俺にとって、一番可愛いのは満奈だ」

他の奴らに見せたくないくらい。

素直なところ。

優しいところ。

時々大人っぽくなるところ。

無意識に俺を誘うところ。

甘えん坊なところ。

全て可愛い。

全て愛おしい。

「でもっ・・・!」

まだ言うか!?

華園が、何かを言いかけた時だった。





「だから何?」

玄関から、愛おしい声が聞こえた。