「さっき、兄貴から電話が来て。それで聞きました」

お父さんの双子の妹は、風舞千恵里さん。

余談だけど、千恵里さんの名前はCherry Iの"Cherry"から来てるんだ。

で、千恵里さんの旦那さんが風舞遥人さん。

2人から生まれた子供は3人。

つまり、あたしのいとこ。

大学1年生の風舞翔平。

高校1年生の風舞陸斗。

小学5年生の風舞美丘。

誰が継ぎたいって言ったんだろう?

「そうか・・・」

そう言ってお父さんは、フッと笑った。

「君には負けたよ」

隼斗に向かってそう言った。

するとお父さんは、

「満奈」

今度はあたしの方を向いた。

真剣な瞳。

あたしもちゃんと、お父さんの方を向く。

「実は先週、千恵里から電話が来てな。陸斗がCherry Iを継ぎたいと言っているそうなんだ」

陸斗が・・・?

「それに、美丘が“満奈ちゃんが歌ってる姿見たい”って・・・」

美丘・・・。

ありがとう。

「出来れば自分の子供に継がせたかったんだが・・・。こういう決断はしたくなかった」

お父さん・・・。

切なそうな顔をされると、あたしの胸が苦しくなる。

決意が揺らぎそうになるよ。

「だが」

お父さんは続けた。

「満奈は本当に、心の底からアイドルと言う仕事をやりたいんだな?」
「はい」

“アイドル”と言う仕事は大変だけど。

楽しくて。

やりがいがあって。

あたしは、この仕事をやりたい。

アイドルであるという事に、誇りを持ってた。

みんなを笑顔にさせる事が、最大の夢だった。