「満奈を離せ」
隼斗が低い声でそう言った。
「嫌だね。って言うか流川隼斗ってテレビとプライベートじゃキャラ違うの?」
雅也が怖い。
今までも怖いと思った事は何度もあるけど・・・。
今が1番怖い。
「俺は本気で満奈を愛してるんだよ?流川隼斗に満奈は合わないしね」
何も出来ない自分が嫌。
抵抗すら出来ない自分が嫌。
そんなあたしに唯一出来る事は、助けを求める事だけだった。
その時。
―――コンコン
―――ガチャッ!
控室のドアが開いた。
そして、入って来たのは、
「満奈っ!・・・って雅也くん!」
「何してるんだ、雅也!」
「隼斗くんまで、どうしてここに・・・」
あたしのお父さんとお母さんと、雅也のお父様だった。
チラッと時計を見ると、11時を過ぎていた。
もう、婚約発表会が始まる時間が過ぎている。
「親父、聞いてよ。満奈が婚約破棄したいって言ったんだ」
あたしを左腕でしっかりとホールドし、右手に持ったナイフを隼斗に向けたままの雅也。
それには不釣り合いな明るい声が、控室中に響いた。
「なっ!どうしてですか、満奈様!」
焦ってる雅也のお父様。
「だってあたし―――」
それにこたえようとしたあたし。
だけど、それは、
「柳さん」
お父さんの言葉によって、遮られた。

