(side雅也)

あぁ、あれは2年前の冬の事だ。

「お前に婚約者を紹介しよう」

親父にそう言われ、紹介されたのは桜井仁菜。

あの大企業、Cherry Iの次期社長だった。

「初めまして、桜井仁菜です」

正直、すげぇ可愛かった。

それに、誰かに似てるような・・・。

そんな気がした。





仁菜と出会ってから1か月が経った頃。

取引のために、Cherry I社長がうちの会社に来た時。

俺は偶然、聞いてしまったんだ―――。

「いやー、にしても仁菜さんは凄いですね!将来が楽しみですな」
「私も正直、仁菜がここまでやってくれるとは思ってませんでしたよ。だって・・・」

Cherry I社長の次の言葉に、俺は耳を疑った。





「満奈がアイドルやりたいなんて言わなきゃ、確実に満奈に継がせてましたからね」





満奈・・・!?

アイドル・・・!?

その2つの単語で、俺はピーンと来た。

国民的人気アイドル、Rainbowの桜井満奈の事か!?

実はRainbowの大ファンの俺。

ちなみに担当は、1番可愛い桜井満奈。

じゃあ、初めて仁菜に会った時の“誰かに似てる”って言うのは。

あれは、桜井満奈の事だったんだ―――。

俺と仁菜が婚約すれば、桜井満奈とは親族になれんのか!?

うわっ、めっちゃ嬉しいんだけど!

・・・でも、俺はそこで冷静に考えた。

裏を返せば。

満奈がアイドルじゃなく、Cherry Iを継ぐ事になってたら。

俺の婚約者は、




―――仁菜じゃなくて、桜井満奈だった?