「返事は?」

でも・・・さ。

Cherry Iを継ぐためには、雅也と婚約しなければいけない。

あたしがCherry Iを継がなければ、お父さんとお母さんが困ってしまう。

18年間、こんなあたしを育ててくれた優しくて温かい両親。

そんな2人を、見捨てるなんて出来なくて。

あたしはこの道を選んだんだ。

拒否権なんて・・・、





「・・・はい」





初めからないんだ。

嬉しそうにそう言った。

嘘でも、笑わなきゃ・・・。

「そっか」

雅也も笑った。

「じゃあいつ発表しようか・・・」

カレンダーを見つめる雅也。

あぁ・・・。

いよいよか。

あたしが、“桜井満奈”が。

“桜井満奈”ではなく、“柳満奈”になる日がやってくるのか・・・。

なんか・・・しっくり来ない。

これが・・・好きな人の名字だったら。

“流川満奈”だったなら。

もっと、幸せを感じられたはずなのに―――。

「・・・来月にしよう!10月15日に」

10月・・・15日?

今は9月下旬。

あと約2週間後?

「俺の誕生日なんだ」

あぁ、なるほどね・・・。

後2週間で、あたしは―――。

「いいですよ」

笑顔でそういう半面、心は悲しみでいっぱいだった。