「奪えばいい話じゃねぇか」
俺の推測。
多分満奈は・・・まだ俺の事が好き。
だって、好きじゃなかったら見舞いに来ないだろうし。
何よりも、
“冗談、だよね・・・”
この言葉が証拠。
好きじゃなかったら、忘れられても構わないはず。
だけど、あの時にそう言った満奈は、
―――まだ俺の事を、想っている。
都合のいい解釈かもしれない。
でも・・・いいんだ。
ホントに、心から満奈が欲しいから―――。
その時、
「ダメだ」
兄貴のそんな言葉が聞こえた。
「はっ!?」
意味が分からなかった。
「満奈ちゃんは自分で決めたんだ。それを邪魔する権利がお前にあるのか?」
“満奈ちゃんは、自分で決めたのよ。貴方に引きとめる権利はないわ”
聞いた事があるような、その言葉。
誰に、いつ、どこで言われたのかは覚えてないけど・・・。
いつかも、そんな事を言われた。
「だから・・・簡単に奪うとか言うな」
兄貴は結局・・・どうしたいんだよ。
俺を応援してるんじゃないのか?
「満奈ちゃんがどんな思いで決意したか分かってるのか?」
無性に腹が立った。
好きなのに・・・。
欲しいのに・・・。
こんなにも女を求めたのは“初めて”。
なのに・・・。
目の前が真っ暗になった。