カフェに入り、小さめのテーブルに案内された。

あたしはアイスココア、麻友はコーヒーを注文する。

「満奈、大丈夫?今日はずっとボーっとしてるけど・・・」

店員さんが去った後。

麻友が話を切り出した。

「何かあった?」

優しい声で、そう聞いてくれる。

そんな温かさが、今のあたしには必要だった。

別れただけでも悲しいのに・・・。

忘れられたなんて、凄いショックだよ。

“誰?”

あの時の隼斗の顔が、忘れられない。

あの時の隼斗の声が、耳から離れない。

“満奈の事、もっと知りたい”

でも・・・そう言ってくれた時は、嬉しかった。

・・・だけど。

“お前は、俺のモノだ”

柳さんのあの台詞が、怖くてたまらない。

キスされ、抱かれたあの夜。

今でもゾッとする。

怖い。

嫌だ。

柳さんに、会いたくない。

きっとまた隼斗に会ったら・・・次はどんな事されるか分からない。

だからあたしは、隼斗に会いに行けずにいた。

気がつけばあたしは、麻友に全部話していた。

隼斗が夜道で襲われた事。

仁菜と同じ方法で襲われた事。

心配で、会いに行った事。

あたしと、あたしに関する記憶だけを無くした事。

柳さんに、抱かれた事。

全部話した。

もう、ダメ・・・。

あたし、生きたくないよ・・・。

「そっか・・・」

話し終わった後。

麻友は小さくそう言った。