(side隼斗)

あの日から、何かが違うような気がしてならない。

心に穴があいたような・・・。

頭が真っ白になったような・・・。

そんなもどかしい感覚に、俺は襲われていた。





俺はどうやら、夜道で誰かに殴られたらしい。

それも・・・金属バットで。

俺・・・殺されかけてた?

なんだか微妙な気持ちになる。

でも・・・。

このやり方、前にも聞いた事があるような。

確か、誰かの妹だったはず。

そこまでは思いだせたのに・・・、肝心の“誰か”を思い出す事は出来なかった。

それと・・・。

目覚めた日から、何かが引っかかるんだ。

“隼斗っ!”

いきなり知らない女の子に名前呼ばれたし。

・・・そう、“知らない女の子”だと思ってた。

だから、

“・・・お前、誰?”

そう聞いた。

すると、その子は悲しそうな顔を見せた。

俺・・・何か悪い事聞いたか?

もしかしたら・・・ファンの子か!?

だとしたら、ヤべぇかも。

俺の本性知ったら・・・逃げるか?

そう思っていた。

でも、彼女からの返事は意外なモノだった。

“冗談、だよね・・・?”

彼女は笑った。

何が冗談なんだ?

俺には訳が分からなかった。

“満奈だよ?”

満奈?

そんな名前・・・俺の周りにいたっけ?

“誰?”

2度目のその言葉。

この時の俺はまだ気づいていなかった。

彼女を2度も傷つけているという事に―――。