制服のネクタイで、あたしの手首を縛った柳さん。

痛い・・・。

怖い・・・。

「やな、ぎさん・・・」

怖くて、やめてほしくて。

彼の名を呼んだ。

“恋”も“愛”も芽生えない婚約者に・・・あたしは何をされようとしてるの?

「“雅也”って呼べって言っただろ?」

優しい口調。

それとは対照的な、黒い笑顔。

あたしの肩はガタガタと震えていた。

柳さんはそれに気付いたのか、

「何を怖がってるの?」

不思議そうに、そう聞いた。

彼は、あたしの服に手を掛けた。

「大丈夫。いいところに連れてってあげるから」

“嫌っ!”

そう叫びたい。

1発殴ってやりたい。

・・・だけど、手首は自由を失い、怖くて声を発せない。

代わりに出てくるのは・・・涙だけだった。

嫌だよ・・・。

キスしてもいいのは。

あたしを抱いてもいいのは。





―――隼斗だけ。





彼の手はどんどん上がってくる。

「満奈・・・好きだよ」

その言葉も、言っていいのは隼斗だけ―――。

「・・・やぁっ・・・」

不覚にもあたしは声を上げてしまった。

他にも言いたい事はあるのに・・・。






隼斗だけを感じて来たこの身体。

それが、今日・・・あたしは“隼斗のモノ”ではなくなった。