「満奈には俺がいるじゃねぇかよっ!」
―――ガンッ!
柳さんは、握った拳を壁に打ち付けた。
怒りに任せて。
「なのに何で・・・アイツのところに行くんだよ・・・」
怖い。
怖い。
怖い・・・!
早く、逃げなきゃ・・・!
あたしの中のサイレンが、危険を知らせてる。
踵を返し、ドアを開けようとした。
その時だった。
―――ガシッ
「きゃっ!」
腕を、柳さんに掴まれた。
「逃げんなよ」
低い声。
逃げたい。
怖くて逃げらない。
―――グイッ
そのまま腕を引っ張られた。
「嫌っ・・・」
あたしは靴も脱がずに、家に上がってしまった。
ごめんなさい、お父さん、お母さん。
「ちっきしょ・・・!」
柳さんに掴まれている腕が、ジンジン痛む。
痛い。
怖い。
・・・逃げられない。
階段を上がり、あたしの部屋で止まった柳さん。
―――ガチャッ
ドアを開けた。
「なぁ、満奈」
「は、い・・・」
なんとか絞り出した声。
「お前は、俺のモノだ―――」
そう言った彼の声が、耳に焼き付いて離れなかった。

