それからも隼斗は、あたしにいろんな事を聞いた。
趣味、特技、好きなモノ。
記憶を無くす前なら、絶対に知ってる事。
だからこそ・・・聞かれるのが余計に辛かった。
そして、ついに―――。
「なぁ」
「何?」
彼は躊躇いがちに聞いた。
「俺と桜井の関係って、何?」
あたしが1番恐れていた質問が来た。
それも、
“桜井”
出会った頃の呼び方で・・・。
ただ1回、名字で呼ばれただけなのに。
こんなにも、悲しくなってしまう。
こんなにも、苦しくなってしまう。
こんなにも、泣きたくなってしまう。
こんなにも、距離を感じてしまう。
こんなにも・・・愛おしさが溢れてしまう。
“片想い”
その単語が脳内を駆け巡って・・・。
余計なほどに、彼を愛おしく想ってしまうの。
それは・・・どうしてなんだろう?
もう、叶わない恋だから?
あたしの想いは・・・隼斗には届かないから?
視線が泳ぐ。
彼はずっとあたしを見つめていた。
どうしよう・・・。
何て言えばいいの?
“芸能人同士”
ダメ・・・だね。
あたしは今は、芸能人じゃないんだし。
“アイドルとファン”
それだと・・・怪しく思われてしまう。

