隼斗が目覚めて、1時間が経った頃。
―――ガラッ
病室のドアが開き、
「隼斗っ!」
彰と美鈴が入って来た。
2人はすぐさまベットに駆け寄る。
「親父に姉貴・・・。心配かけてごめんな・・・」
さっきよりもはっきり話すようになった隼斗。
「ホントに心配したんだからっ!」
美鈴は明るくそう言ったけど・・・涙声。
彰は、ただ黙って笑っていた。
だけど、それとは反面。
彼女・・・満奈ちゃんの表情が。
また、曇っていく―――。
彰と美鈴はまだ知らない。
隼斗が満奈ちゃんの記憶を失ったって事を―――。
「ねぇ、彰、美鈴」
「何だ?」
2人を呼ぶと、彼らの視線は私に来た。
「大事な話があるから・・・ちょっと病室を出ない?」
私がそう言うと・・・2人は不思議そうな顔をした。
翔也だけは私の意図を分かってくれたようで、
「・・・行こう」
それだけを言って、先に病室を出た。
「あぁ・・・」
「いいけど・・・」
頭上にハテナを浮かべながらも、2人も病室を出た。
そして私は―――。
「隼斗。ちょっと出てくるわね」
隼斗にそう言って、
「満奈ちゃん。隼斗の事、ちょっと頼むわね」
満奈ちゃんにそう告げた。
“もしかしたら”
そんな期待と、
“もしも”
そんな不安を抱えて。
2人を病室に残し、私もそこをあとにした。

