「母さん・・・」
「何?」
弱々しい呼びかけに、優しく答える千歳さん。
彼は・・・あたしを指差した。
プルプルと震える手で。
そして、また―――、
「アイツ、誰?」
あたしにとって、残酷な言葉を投げられた。
「「えっ!?」」
2人はびっくりして、彼の人差し指の先を追う。
やがて、2人の視線はあたしに集まった。
「ま、な・・・ちゃん」
青ざめた顔の千歳さん。
それは、翔也さんも同じだった。
「嘘、でしょ・・・?」
最愛の人と別れ。
最愛の人が誰かに襲われ。
最愛の人に―――忘れられた。
あたし、どこまで不幸になればいいの?
ねぇ、神様。
あたしの小指に結ばれている赤い糸。
あたしの運命の相手。
それは、“流川隼斗”じゃなかったの?
あたしに2人に笑いかけた。
「隼斗はあたしの事、忘れたんですよ」
これ以上に辛い事は、もう・・・ないだろうな。

