“・・・お前、誰?”
隼斗の言葉が理解できない。
誰って、あたしだよ?
桜井満奈だよ?
貴方・・・流川隼斗の“元カノ”だよ?
「冗談、だよね・・・?」
可笑しくなって、あたしは笑った。
そうだよ。
冗談だよね。
きっと隼斗も今に、“満奈”って呼んでくれるはず。
厚かましいかな?
でも・・・やけに真剣な彼の瞳。
・・・嘘でしょ?
まさか―――。
“分からない”なんて、言わないよ・・・ね?
「満奈だよ?」
そう言っても、
「誰?」
隼斗は、その一言しか言わなかった。
はっきりしたその声は、やけに耳に焼き付いて。
叫びたくなる衝動に駆られた。
そんな時、
―――ガラッ
病室のドアが開いた。
あたしは振り向く。
そこにいたのは、
「満奈ちゃんっ!」
「どうしたっ!?」
あたしが泣いてるのを見て、驚く千歳さんと翔也さんだった。
急いであたしの元に駆け寄る2人。
「どうしたの?」
優しいトーン。
でも、あたしの心臓はドクドクと鳴りっぱなしで。
治まる事はなかった。

