「もしもし」
『満奈?私だけど・・・』
通話ボタンを押し、電話に出た。
ケータイの向こう側の美鈴の声は、焦っているようだった。
「どうしたの?」
つられてあたしの声のトーンも変わる。
美鈴の深呼吸が電話越しに聞こえて来た。
『落ち着いて聞いてね?』
何の話だろう?
次の美鈴の言葉を聞いて、あたしは耳を疑った―――。
『隼斗が、意識不明の重体なのっ!』
―――ドクンッ
あ、れ・・・?
この言葉・・・前にも聞いた。
それは確か・・・あの時のお父さんの言葉の中にあった。
“桜井仁菜さんが、意識不明の重体で発見されました”
嘘、でしょ・・・?
隼斗が・・・。
意識不明?
『今から迎えに行くわ』
「えっ!?」
美鈴の台詞にあたしは驚いた。
迎えに行く、って・・・。
隼斗に会う、って事?
「無理だよ、あたし・・・」
例え、意識がなくても。
今、隼斗の顔をみたら・・・。
あたしの決意が、揺らいでしまう。
『お願い、満奈っ!』
美鈴は必死にそう言った。

