そして、さらに―――。
あたしは見てしまった。
嘘・・・。
目を凝らし、よく見てみる。
暗くても、はっきり分かった。
その、金属バットには、
赤いモノが、こびりついていた―――。
あれって・・・血、だよね・・・。
どうして?
さっき、柳さん言ってたよね?
“バスケやってた”って・・・。
じゃあ何で?
何でバットがあるの?
何で血がこびりついてるの?
“―――ピーーーッ”
あの時の機械的な音が、耳に焼き付いて離れない。
“仁菜っ!仁菜ぁーっ!”
お母さんの悲痛な叫び。
“・・・くっ・・・”
声を殺して泣いていたお父さん。
“22時20分、死亡確認”
医者の冷静な言葉。
6月17日。
あの頃の情景が、鮮やかにリフレインする。
「仁菜・・・」
やっとの事で出た声は、妹の名を呼んだ。
呼吸するのでさえ、やっとの事。
身体が震えている。
どうして―――?
訳が分からなかった。