(side隼斗)

―――ガチャッ

部屋のドアを開けた。

すると、

―――ボフッ

何かが俺に抱きついてくる。

・・・鼻につく香水の匂いが、俺は嫌いだ。

そして、

「隼斗先輩っ♡」

甘ったるい声で、俺の名を呼んだ奴は華園。

ウザってぇ・・・。

「離れろ」
「嫌ですっ」

腰に回された腕を解こうとしても、華園はなかなか離そうとはしない。

「どうしてですかぁ~?」

どうしてって・・・。

んなの、決まってる。

「満奈が好きだから」

もう何度、コイツにこの台詞を言っただろうか。

何度言っても華園は、

“えぇ~”

とか、

“今に私の事を好きになりますよ”

と言われ、スルーされ続けて来た。

・・・だけど。

今日の華園は、違ったんだ―――。





「もう、想ってても無駄ですよぉ」





その言葉の意味が分からなかった。

一瞬だけ固まる身体。

想ってても・・・無駄?

俺が、満奈の事を想う事が?

無駄って・・・。

「どういう事だよ」

俺が聞くと、華園は嬉しそうに笑った。





「桜井先輩は隼斗先輩の事、好きじゃないんですって♪」





奴は嬉しそうに。

・・・俺にとって残酷な事を言った。