あたしは振り返った。

時刻は17時。

外はまだ明るい。

だからこそ、あたしを呼びとめた人の表情がはっきりと読み取れた。

数メートル先にいた人物は―――。





「玲央・・・」





紛れもなく、あたしの幼なじみ。

相葉玲央だった。

「お前・・・、今まで何やってたんだよっ!」

あたしに近づき、そう叫んだ。

高2の春以来、天然KYな癒し系男子じゃなくなった玲央。

今だって、まるで隼斗のような話し方。

目の前にいるのは玲央なのに、玲央じゃないような気がした。

「芸能界も学校も辞めて、流川とも別れて・・・」

切なそうな瞳の玲央。

あたしはただ黙って、彼を見つめた。

「満奈、あの時言ったよな?“あたしには隼斗しかいない”って・・・。俺に言ったよな?」

そう言えば・・・そんな事もあったな・・・。

今となっては懐かしい思い出。

「俺、アイツなら任せられるって思ったのに・・・。何でだよ・・・」

肩を震わせてる玲央。

あたし、この人に相当大切に思われてる・・・。

不謹慎だけど、そんな事を考えてた。

ちらっと時計を見た。

「ごめん、もう行くね」
「行くって、どこに・・・」
「パーティーだよ」
「はっ!?」

あたしがそう言うと、彼は意味不明と言った顔を見せた。

そりゃそうだよね。

幼なじみの玲央にも言ってなかったもんね。

「あたし、Cherry Iの次期社長なの」
「・・・えっ?」
「じゃあね」
「ちょっ、待てよ!満奈っ!」

玲央の言葉も聞かずに、車に乗り込んだあたし。

松沢さんは、少々気まずそうに車を走らせ始めた。