(side満奈)

綺麗なドレスを身に纏う。

肩までの長さの髪は、少しだけ巻いた。

いつもはまったくしないメイクも、ナチュラルに施した。

「あら満奈。凄く綺麗よ」
「ありがとう」

お母さんが褒めてくれた。

綺麗って、ホントかな?

「それにしても、そのドレスはどこから持ってきたの?」

その質問に、あたしは焦った。

まさか、“元彼”からのプレゼントだなんて言えない・・・。

「自分で買ったんだ~。凄く可愛かったから!」
「へぇ~」

適当に誤魔化す。

お母さんは、それ以上突っ込んでこようとはしなかった。





今日は、パーティーに出席するの。

“将来の日本を支える人達が集まったパーティーだからな”
“しっかりやるのよ”

お父さんとお母さんの言葉を思い出す。

“将来の日本を支える人達”かぁ・・・。

あたしもその中の1人なのかな?

そんなパーティーに着ていくのは、もちろんドレス。

あたしが選んだのは・・・真っ赤なベアトップのドレスだった。

迷わずこれにした。

これは、高2のクリスマスの時。

隼斗からクリスマスプレゼントとして貰ったんだ。

懐かしいな・・・。

その上からボレロを羽織る。

「じゃあ、行ってくるね」
「いってらっしゃい。ちゃんと挨拶するのよ」
「はぁーい」

ハイヒールを履き、家を出た。

すると、

「お待ちしておりました、満奈様」

松沢さんが、黒のベンツを背に深々とお辞儀をした。

「お待たせしました。参りましょう」

そして、車に乗り込もうとした。

その時。





「満奈っ!?」





聞き覚えのある声がした。