「何で芸能界辞めちゃったの?」

あたしの真向かいに座っている千咲が、身を乗り出して聞いて来た。

「あのね、話すと長くなるんだ・・・」

この気持ち、誰かに聞いてほしかった。

でも、隼斗には言えなかった。

言わない方が、彼を傷つけないで済むと思ったから―――。

辛い。

「実は―――」

あたしは、今までの全てを2人に話していた。

仁菜が死んだ事。

仁菜の代わりに会社を継げってお父さんに言われた事。

継ぐ場合は隼斗と別れて仁菜の許婚と結婚しろって言われた事。

さんざん悩んだ事。

お母さんに支えられて、決断した事。

そして―――。

隼斗に、別れを告げた事。

あたしの本音。

気がつけば、全て話していた。

2人は、黙って聞いてくれた。

「・・・つらかったね」

そう言って、頭を撫でてくれた。

「ホントは隼斗の事、大好きで仕方ないんだ・・・」
「うん・・・」
「でも、家族の事を思うとやっぱり・・・」

振り返ってみると、また涙が溢れてくる。

隼斗・・・。

大好きだよ。

大好きなんだよ。

“他に好きな人が出来た”

違う。





好きなのは―――隼斗だけ。





「柳さんと結婚しなきゃなーって、思ってさ」

頭では分かってても。

心ではまだ、隼斗を想ってる。

多分、一生―――。