(side満奈)

“別れよう”

今日、あたしは・・・。

1番好きな人に、1番最悪な言葉を伝えた―――。

涙が止まらない。

校庭を走りながら、あたしは泣いた。

隼斗・・・。

隼斗・・・。

“別れよう”なんて、あたしの本心じゃないんだよ?

ホントはね、大好きで大好きで。

言葉じゃ言い表せないくらい大好きなの。

愛してるんだよ?

こんなに泣くぐらい・・・貴方を愛しているんだよ?

・・・でもね。

あたしはこうせずにはいられなかったんだ。

校庭を走り抜け、校門をくぐる。

そこで1度、振り向いた。

もうきっと・・・ここには来る事はない。

大きくそびえたつ如月高校。

さよなら―――。

また前を向き直す。

すると、

「お待ちしておりました、満奈様」

1人の運転手と立派な車が、あたしを待っていた。

彼は松沢さん。

今まではお母さんの専属の運転手だったんだけど。

これからはあたし専属の運転手になるんだ。

松沢さんの運転する車に乗り込んだ。

ゆっくりと動き始めると同時に、また涙が溢れだした。





さよなら、隼斗―――。





貴方の事は、ずっと見守っているからね。

だって、あたしは貴方の“大ファン”だもん。

今日からあたしは、

“Rainbowの桜井満奈”

ではなく、

“桜井財閥の御令嬢、桜井満奈”

として生きていくんだ。

こんな所で泣いてちゃいけない。

あたしは、前だけを見てればいいんだ―――。