嘘だ。
こんなの本心じゃない。
ホントは、他の奴のところになんか行かせたくない。
一生、俺だけのモノにしてしまいたい。
だけど、俺は弱虫。
好きな女すら、手元に置いておく事が出来ないなんて。
自分で自分を嘲笑った。
「あたし、もう行くね」
靴を履いている満奈。
その腕を引いて、抱き締められたら―――。
思わず、手が伸びそうになる。
ダメだ。
もう俺らは、“彼氏彼女”の関係ではない。
ただの・・・ただの!?
“ただの”何だろう?
友達か?
「行くって、どこに・・・」
「あれ?聞かなかった?あたし、転校するんだ」
はっ!?
衝撃の事実に、耳を疑う。
満奈が・・・転校だと!?
「どこに・・・」
「・・・隼斗には関係ない」
聞こうとしても、ズバッと切られてしまった。
・・・そりゃそうだよな。
俺らはもう、何の関係もないんだ。
心に大きな穴が空いたような気分。
満奈は立ち上がる。
視線を合わせた。
「・・・バイバイ」
満奈は笑って、そう言った。
そんなに・・・俺と別れるのが嬉しいのか?
そう思うと、少し苛立った。
しかし、その瞬間。
―――グイッ
物凄い力で、腕を引き寄せられた。
そして、
―――チュッ
唇に、柔らかいモノが当たった。
目の前には満奈の顔がドアップで映し出されている。
俺、満奈に・・・キスされてる!?
何で!?
お前には・・・好きな奴がいるんじゃなかったのかよ!?
多分、キスしてたのはほんの一瞬。
すぐに離れた唇同士。
「・・・じゃあね。元気でね!」
掴んでいた俺の腕を離すと、
―――バタンッ
満奈は、ドアの向こうへと姿を消した。

