頭の中が真っ白になった。
そんなの・・・1番嫌だよ。
「さっき、“隼斗と結婚したいか?”って聞いたよね?それであたし、“うん”って言ったよね!?」
訳が分からない。
何で・・・。
何で隼斗と別れなきゃいけないのよっ!
隼斗がいなかった日々を思い出す。
思い出す度辛くて、悲しくて・・・。
もう2度と、あんな思いはしたくないのに。
何で人生って、こんなにも上手くいかないんだろう。
「もし会社を継ぐなら、仁菜の許婚を婚約してもらう」
「えっ・・・?」
仁菜の許婚と・・・。
婚約!?
「仁菜の許婚って確か・・・」
「柳雅也くん。柳グループの御曹司だ」
聞いた事はある。
如月財閥や桜井財閥には及ばないけど、それなりの企業だ。
そこの御曹司と婚約・・・。
「あたし、好きになれるかどうか分かんないよ?」
あたしはそう聞いた。
ってか、隼斗以外好きになれない。
・・・ううん、違う。
“ならない”んだ。
「そんな事はいいんだ。ただ彼に、会社の業績を伸ばしてもらえればそれで十分なんだ」
その言葉に驚いた。
そんな事は・・・いい!?
気持ちは関係ないって事?
会社の事だけでいいって事?
愛も何もない世界で、一生生きていけって言うの?
実の娘に向かって?
“離したくねぇ”
“愛してる”
隼斗の言葉が、脳裏を駆け抜けた。
そんなの嫌だよ。
「あたし・・・愛したい。愛されたいよ・・・」
愛してくれる彼と別れて?
愛してくれない彼と婚約?

