どうやって行ったかなんて覚えてない。

ただ、気がつけば。

「仁菜っ・・・」

ひたすら妹の名を呼ぶお母さんと。

そんなお母さんの身体を支えているお父さんと。

たくさんの機械に囲まれた、・・・仁菜の姿。

気がつけばあたしは、病院のとある1室に来ていた。

「お父さん・・・、お母さん・・・」

ねぇ、嘘って言ってよ・・・。

目の前に置かれた状況が信じられない。

「昏睡状態って・・・」
「意識が、ないんだ・・・」
「戻るんでしょ!?戻るよね!?」

お父さんの服を掴んだ。

返答を求めているのに、返事は来ない。

「ねぇ、何とか言ってよ!」

ここが病院だってことを忘れて。

あたしはお父さんにそう叫んだ。

そしたらお父さんは、悔しそうに、悲しそうに・・・。



「覚悟を決めてくれ、と・・・」



そう、言ったんだ。

「嫌あぁぁぁ!」

お母さんが叫んだ。

泣き顔なんて見せないお母さんが、泣いている。

“覚悟を決めてくれ”

医者が、そう言ったの・・・?

覚悟って・・・。

それって、もしかして・・・。

受け入れたくない真実。

夢だよね?

そう思って、頬をつねった。

痛い。

夢・・・じゃない。

目の前で起こっている、信じられないような出来事は。

―――――全て、現実?

・・・だとしたら。



“覚悟を決めてくれ”



その言葉は。

その意味は。



―――――仁菜が、死ぬって事・・・?