(side仁菜)

そう、あれは今年のバレンタインデーの時。

手作りしたチョコを、たくさんの友達にあげたんだ。

もちろん・・・修平にも。

香住修平。

学校の王子様的存在で、学年問わず人気のある修平に。

・・・実は、私も恋してる。

きっかけなんて覚えてない。

ただ、気がついたら好きになってた。

優しい性格と、無邪気な笑顔に惹かれていったんだ。

渡すのは、すっごくドキドキした。

「しっ・・・修平!」
「ん?仁菜か。何?」

首を傾げる修平は可愛い。

それが、さらに私の緊張を高めた。

「これっ・・・作ったの」

そう言って、紙袋を差し出した。

受け取って・・・!

怖くて、修平の顔が見れなかった。

目をギュッと瞑った、その時。

「マジ!?サンキュー、仁菜♪」

修平の、明るい声が聞こえた。

そして紙袋が、私の手から修平の手へと移る。

受け取ってくれた・・・!

凄く嬉しかった。

“サンキュー”って言った時の修平の笑顔が、私をまた貴方の虜にさせる。

ホッとした。

ラブレターもなければ、他の男子と違うモノも入れてない。

それでも私は満足してた。

「何で告らなかったのよ~・・・」

親友の姫川胡桃は不満そうにしてたけど。