(side春風)

“あたしね、大きくなったらアイドルになるの!それでね、いろんな人を笑顔にさせるんだ”

満奈がそう言ったのは、アイツが4歳の時だ。

双葉はその話を聞いて喜んだ。

それに反し、俺は少し悲しくもあった。

将来会社を継がせようと思ったのに・・・とな。

しかし、幼い娘が大きな夢を抱いているのに、その夢を捨てて会社を継がせるのは可哀想でな。

俺は双葉と一緒に満奈を応援してたんだ。

そして満奈は、小4の時にRainbow事務所に入った。

デビューするまでの間に、満奈の恋愛話は1度も耳に入ってこなかった。

満奈は双葉に似てとても可愛いのに、彼氏がいる、なんて1度も聞いた事がない。

年頃なんだから、恋ぐらいはしててもおかしくないのに。

そう思った俺は、直接満奈に聞いたんだ。

「満奈は、恋とかしないのか?」

そしたら、こんな返事が返ってきた。

「だって、あたしはアイドルになるんだもん。スキャンダルとか面倒くさいじゃん」

結婚もしないつもり、と笑いながら満奈は言った。

一生、独身で生きていくつもりなのか・・・。

寂しくないのか・・・?

・・・と思っていたら。

満奈がRainbowとしてデビューした。

ドラマも初主演を飾った。

嬉しい事ばかり続いた時に、満奈から電話がかかって来たんだ。

“あたし、SuperStarの流川隼斗と付き合ってるんだ”・・・ってな。

それを聞いた時、嬉しくてたまらなかった。

やっぱり満奈も女なんだ。

“いい人だよ。あたしを大事にしてくれてる”

愛したい男性が見つかってよかったな。

俺は心底喜んだのを、今でもはっきりと覚えているよ。