「っと、こんな事したら隼斗に怒られるな」

准くんはパッと手を離した。

「満奈ちゃん」
「はい」

すると、真剣な瞳で見つめられる。

・・・鼻血出して倒れちゃいそう。

「隼斗の事、頼むな。アイツ、デビューしたころは結構好き勝手やってたから・・・」

それって・・・あの女遊びの事かな?

「は・・・い」

あたしは曖昧な返事をしてしまった。



「・・・カット!」

あたしの最後のシーンが撮り終わった。

すぐさまモニターチェック。

監督さんの声がかかるのを待った。

「・・・うん、いいね!」

満面の笑みの監督さん。

そう言われた瞬間、急に気が抜けた。

「では桜井満奈さん、大和杏樹さんクランクアップです!」

スタッフさんの1人が大声で叫んだ。

現場内が拍手で包まれた。

「お疲れ様、満奈ちゃん」
「杏樹ちゃんもお疲れ様」
「「お疲れ様でした!」」

花園さんがあたしに、村瀬さんが杏ちゃんに花束を渡した。

「一言お願いします」

スタッフさんにそう促される。

あたしは1歩前に出て礼をした。

「えーっと、撮影はあっという間でした。現場は楽しくて、みなさん面白くて。ここに来るのが凄く楽しみでした」

あー、ヤバい。

泣きそう・・・。

「ご迷惑おかけしましたが、ホントに楽しかったです。ありがとうございました!」

もう1度礼をすると、また拍手が起こる。

杏ちゃんも、小さいながらも丁寧なしゃべり方で思い出を話していった。

「満奈ちゃん、また共演しましょうね」

花園さんにそう言ってもらえて、凄く嬉しかった。

「お疲れ様でしたーっ!」

スタッフさんや共演者の皆さんにそう言ってから、現場を後にした。