「もう満奈を食べちゃいたいんだけど」

俺はおちゃらけた口調でそう言った。

すると、満奈はいきなり無言になる。

何も言い返してこない。

いつもなら“馬鹿”って言われんのに。

「どうした?」

優しく話しかけて、身体を俺の方に向かせた。

そして驚いた。

泣いて、る・・・?

「満奈っ!?」
「あっ・・・ごめん」

手で涙を拭う満奈。

それでも、彼女の涙はどんどん溢れて来て・・・。

「ふぇっ・・・」

とうとう、殺していた声を出して泣いてしまった。

・・・柚香の事か?

忘れかけていた重大な事実が脳裏に蘇る。

「は、やと・・・」
「ん?」

しゃっくりを上げながらも、真剣に話そうとする満奈。

そんな満奈の泣き声が風呂中に響いて、余計に切なく聞こえた。

「ごめんね・・・。あたしのせいでこんな・・・」

満奈・・・。

お前、何言ってんだよ。

満奈のせいじゃない。

「迷惑かけちゃって・・・」

迷惑かけたのは俺の方だよ。

そう、事の全ては俺の過去が引き起こしたんだ。

満奈は全然悪くない。

むしろ謝るのは俺の方なんだから・・・。

「ねぇ、あたしってやっぱり邪魔なの・・・?」

んなわけねーじゃん。

俺にとっては将来絶対必要な存在だ。

「柚香ちゃんからいろんな事を聞いて、思ったんだ・・・」

満奈なしの未来なんて考えられない。



「あたし、殺された方が良かったんじゃないのかなって・・・」



馬鹿野郎。

満奈はホントに馬鹿だ。