それでもあたしの手首を離さない春輝くん。
もうっ、振られたんだから離してよ!
「そっか・・・」
納得したような顔。
分かったなら、早く・・・。
顔を背けて、春輝くんから離れようとした。
その時だった。
「失礼し・・・んっ!・・・」
凄い力で引っ張られ、あっという間に春輝くんの腕の中。
そして・・・、キス、された・・・。
「んっ・・・やぁっ・・・」
後頭部を抑えられてるから、身動きが取れない。
嫌だっ!
何で春輝くんと・・・。
“満奈”
ふと、愛おしい人の声を思い出した。
やめてっ・・・!
キスしてもいいのも、隼斗だけなのっ!
涙が溢れて来た。
さっきの撮影の時とは比べものにもならないくらいの量。
そんな時。
―――――カシャッ
変な音がかすかに聞こえた。
何の音だろう?
そして、やっと離れた唇。
それと同時にあたしは、荷物を持ってすぐに部屋を出た。
彼がニヤリと笑っているのも知らないで。
廊下を全力疾走する。
隼斗・・・。
隼斗・・・。
ごめんなさい・・・。
止めどなく溢れる涙。
「満奈っ!って、どうしたの?」
麻衣ちゃんの車に乗り込んでも、まだ身体の震えと涙は治まらなかった。
「無理には聞かないけど・・・何かあったら言うのよ?」
それだけを言って、麻衣ちゃんは車を走らせた。
ありがとう、麻衣ちゃん・・・。
早く隼斗に会いたいのに、今日の帰り道はやたら長く感じた。

