「最後に1回だけ言わして」

そう言って玲央はニコッと笑った。



「俺、満奈が好き」



きっとこれが、玲央からの最後の告白。

「うん・・・。ありがとう」
「でも、簡単には諦められない。少しだけ・・・時間くれる?」

その言葉にあたしは、小さく頷いた。

そして―――――。

「ちゃんとけじめつけるからさ。これがその証ね」

玲央がそう言った後。

―――――チュッ

唇に暖かい感触。

玲央の綺麗な顔が間近にある。

あたしは玲央にキス、された。

でも拒否はしないよ。

もう分かってるから。

玲央が・・・あたし達の邪魔をしないって。

「・・・ありがと、満奈」

優しく微笑んだ彼は、椅子から立ち上がった。

「俺、この部屋から出ていくよ。そんで、未巳華先輩と暮らす」
「そっか・・・」

荷物を次々とまとめて、玄関に並べていく。

その途端、寂しさが込み上げてくる。

今までは嫌で仕方なかったのに・・・。

「それじゃ・・・って、満奈!?」

靴をはいた玲央が、あたしの方を振り向いて驚いた。

だってあたし・・・泣いてる。

「どした?」

優しい声。

「玲央が・・・離れて行っちゃうような気がして・・・っ」
「ハッ、離れて行くのはお前の方だろ?」

頭をポンポンと軽く叩かれる。

「お前言ったじゃん。“大事な幼なじみ”って。だから、この先もずっと・・・な」
「うん・・・」
「何でも話す事!・・・分かったな」
「うんっ・・・」
「じゃあな」

どうしてだろう。

最後の別れでも何でもないのに。

教室でまた会えるのに。

何故か涙が止まらなかった。