玲華さんは床にしゃがみこんだ。
「玲華さんに謝ってよ!泣いちゃったじゃないっ!」
アリアさんがその様子を見て、あたし達に向かって叫んだ。
・・・何の涙なの?
あたし達からの批判に対する涙?
アリアさんの言葉からするとそう聞こえるけど・・・。
この人は、ちょっと言われたくらいで泣いたりするような女ではない。
「何とか言いなさいよっ、Rainbow!」
「アリアは黙ってっ!!」
初めて聞いた、玲華さんの大きな声。
それを聞いたアリアさんは驚いた顔を見せる。
「玲華さん・・・?」
「違うのよ・・・。この涙は、Rainbowじゃなくて・・・パパに対する悔しさの涙なのよっ!!」
「玲華っ・・・!」
玲華さんが顔を上げる。
化粧が落ちてボロボロな顔だった。
でも、それが逆に玲華さんの“真実の顔”だと思った。
「パパは、毎日毎日仕事に明け暮れてて私を構ってくれなかった・・・。それでも私は仕事熱心なパパを尊敬してたの・・・」
「・・・玲華・・・」
加賀谷社長さんが玲華さんの肩に手を置く。
しかし、
―――――パシッ
「触らないでっ!」
綺麗に払われてしまう。
「小6の時にパパに“芸能事務所を作るんだが玲華、アイドルやらないか”って言われて・・・、やっとパパの近くにいられると思ったけど・・・」
不意に、玲華さんの涙が多くなった。
あたしは黙ってその姿を見つめてた。
「今年の5月に、Rainbowがデビューしてきてあっという間に№1の座を奪われてしまった。そしたらパパの態度は急に変って、物凄く私達を叱ったの。“何故あんな奴らに1位を取られたんだ!?”って・・・」
「玲華っ!やめなさい!」
今度は怒る加賀谷社長さん。
忙しい人だねぇ・・・。
「その前にはSuperStarにも1位を取られた。その時は怒られなかったのに、どうして今回は怒ったのか聞いたら“SuperStarは男性だし、人気は落ちてきてるからどうでもいいんだ”と言いました・・・」
あたしの怒りのボルテージが上がっていく。
Rainbowを“あんな奴ら”扱いして?
SuperStarを“人気が落ちている”で片づけた?
・・・馬鹿にしないでよっ!
言いたかったけど、ここはあたしの出る幕じゃない。
黙ってその様子を見届けてた。

