ピンポンパンポーン

会場内に響く音。

『お知らせいたします。Rainbow First Live Tour “We Are CuteGirls"、本日の公演は中止させていただきます』

悲しかった。

せっかくみんな、楽しみにしててくれたはずなのに。

こんな形で終わらせてしまうなんて・・・。

会場のドアが開き、ファンが次々と出ていく。

みんな、恐怖に怯えながら。

「キッズが・・・」
「・・・うわぁぁん!」

ファンと入れ替わるように入って来たのは、ピシッとした制服の人達と、白い服の人が数名。

警察と救急隊員だった。

「君達、ちょっと署まで同行願います」

警察に誘導されて、SweetLove信者も会場を出ていった。

でもその集団の中に、玲華さんとアリアさんの姿は見えなかった。

きっと隙を見て逃げたんだと思う。

キッズの手を刺した男の人は手錠をかけられた。

「橋本さん、今すぐ病院へ行きましょう」

救急隊員の人と一緒にキッズもいなくなる。

会場に残ったのは、あたしとちぃちゃん、華歩、真琴。

そして、杏ちゃんとお母さんだけだった。

「絆ちゃん、大丈夫?」
「ええ。きっと大丈夫よ。キッズは強いから」

杏ちゃんの問いにちぃちゃんが答えた。

「すみません。杏樹を守ってくださり、キッズちゃんにはどうお礼をしてよいか・・・」

杏ちゃんのお母さんが困ったような顔をした。

「違いますよ」

華歩が否定した。

「キッズ、自分から刺したの。多分・・・アイツらを止めるために」

確かにそう見えた。

手を大きく降って、自分からカッターナイフに向かっていった。

「絆ちゃん・・・」

杏ちゃんが小さく呟いた。




こんなの、まだ序章に過ぎなかった。

長い悪夢と戦いの始まりを知らせる合図でしかなかった。