まったくもってどうかしてる。 人をかっさらっておきながら何も悪びれることない様子でさっきからスリスリと頬を寄せてくる少年を見てはぁ、と深いため息をつく。 …なんて、突然誘拐された割に焦りもせずこんなに冷静な自分もどうかと思うけど… 「…やっぱり、欠けてるのかね」 「?今何て言ったの?」 ポロリと零れた本当に小さな独り言を、まさか拾われるとは思わなかった。 思わず面食らってしまう。 「…何でもないよ」